3月の歌舞伎は、
何といっても歌舞伎座での通し狂言「菅原伝授手習鑑」

「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」とこの「菅原伝授手習鑑」は
「丸本歌舞伎」(まるほんかぶき)と言って、
人形浄瑠璃の名作をそのまま歌舞伎にもってきた三大名長編作品として
何度も上演され愛され続けてきました。

「菅原伝授手習鑑」は見取りといって一つの段だけではよく上演され、
特に「寺子屋」や「車引」は非常に人気でよく出ますが、
通し狂言の機会はなかなかなく、
今回は2002年の菅原道真公没後千百年にちなんで行われて以来、
なんと13年ぶり。
菅丞相役には、片岡仁左衛門。
家の芸としてこれを極めることに全身全霊を傾け、
公演中は「精進潔斎(しょうじんけっさい)」、身を清め、牛肉は食べず、という徹底ぶり。
特に「道明寺」は人形浄瑠璃では当たり前のようにできるものを
役者が人間である歌舞伎でいかに説得力あるものとする
非常に難しい場面があります。

人間から神になった菅原公役が、今できるのは仁左衛門丈ただ一人。

必見です。

「通し狂言」といっても、時系列ではありながら完全な順番通りではありません。
でもこのほうが昼の部、夜の部それぞれにクライマックスがあって
非常にわかりやすく、
ビギナーの方もきっと楽しめると思います。

昼の部
「賀茂堤」「筆法伝授」「道明寺」で、
菅丞相(かんしょうじょう・菅原道真のこと)が政争に巻き込まれ、
政敵の奸計から大宰府に流されるまでに軸を置いています。

夜の部
「車曳」「賀の祝」「寺子屋」と、
菅丞相に長く仕える白大夫と三つ子の息子たちが中心。
やんちゃな梅王丸、
優し過ぎて政敵に菅丞相追い打ちの口実をつくってしまう桜丸、
義理との板挟みで悲劇へと突き進む松王丸。
どの段も目が離せません。

菅丞相は昼にしか出ませんので、
仁左衛門目当ての方は、その点を気をつけましょう。

夜は夜で豪華。
松王丸に染五郎、桜丸に菊之助、梅王丸に愛之助。
「寺子屋」で松王丸とのダブル主役ともいえる源蔵には松緑という
素晴らしい布陣です。
壱太郎は昼は苅屋姫、夜は戸浪。
「寺子屋」の戸浪で、千代役の孝太郎にどれだけ伍すことができるか、
非常に楽しみです。

昼の部に松王丸は出てきませんが、
染五郎は「筆法伝授」で、源蔵役で出てきます。
逆に夜の源蔵役に専念の松緑は、昼の出演はありません。

こう見てくると、
やはり「菅原伝授手習鑑」にあって菅丞相と源蔵は
特別な存在だということがわかります。

「筆法伝授」にこそ「寺子屋」に続く大きなドラマの伏線が隠されている!
師弟愛の物語が浮かび上がってくるのは、
通し狂言ならではです。

詳しい配役やみどころは、
以下のサイトでご確認ください。

http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2015/03/post_85.html