中学生、高校生は、
歌舞伎俳優にとってはざまの季節です。
ふさわしい役も少なく、声変わりもあり、普通舞台から遠ざかります。
舞台からは遠ざかっても、稽古は続く。
このときどれくらい稽古に励むかで、のちに花開き、成る実の大きさが変わってくるものです。

そんな季節の中村鷹之資が勉強会の翔の会(8/2)で挑んだのは、
なんと、
これまでやったことのない女方の「藤娘」
歌舞伎ではなく能の「安宅」です。

父・中村富十郎はすでにありませんが、
鷹之資の周りにはたくさんの応援者がいて、
彼を支えています。
その支え方が、尋常ではないことが、この会でよくわかりました。
また、鷹之資もその尋常ではない厚情をよく理解し、
全身全霊で応えようとしています。

まずは「藤娘」。
能楽堂の橋掛かりに姿を現したときの可愛らしさ!
想像以上に似合っていました。
所作事は、上半身は軟らかいのですが、下半身の足さばきに男が出ます。
初めての女方ですから、仕方ないですね。

KAATで坂田金時の飛び六法を見たときから、
いつか鷹之助の弁慶が見たいと思っていたので、
「安宅」は楽しみにしていましたが、
まさか能で、ここまで本格的にやるとは思っていなくて、びっくりです。
故・片山幽雪師、九郎右衛門師に習い、
地謡がその九郎右衛門に味方玄、武田祥照というぜいたくさ!
いったい私は何を見に来たのかわからなくなりそうでした。

女方、能、と自分の土俵ではないところでの作品が2つ続き、
最後に踊った「玉屋」でようやく本領発揮。
様々な情景をしなやかに、楽しそうに、リラックスして踊る姿に、
この人は本当に踊りが上手いな、と感心至極。

妹の渡邊愛子も「雨の五郎」で初めての立役に挑戦しています。