仲野マリの歌舞伎ビギナーズガイド

一度は観てみたい、でも敷居が高くてちょっと尻込み。 そんなあなたに歌舞伎の魅力をわかりやすくお伝えします。 古いからいい、ではなく現代に通じるものがあるからこそ 歌舞伎は400年を生き続けている。 今の私たち、とくに女性の視点を大切にお話をしていきます。

講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」を
東京・東銀座のGINZA楽・学倶楽部で開いています。
歌舞伎座の隣りのビル。
窓から歌舞伎座のワクワクを感じながらのひとときをどうぞ!
これまでの講座内容については、http://www.gamzatti.com/archives/kabukilecture.html
GINZA楽・学倶楽部についてはhttp://ginza-rakugaku.com/をご覧ください。

タグ:松本金太郎

1月24日、新装歌舞伎座は初めてとおっしゃるビギナーをお連れして、
歌舞伎座に観劇にまいりました。
昼と夜とどちらのチケットを取るか、考えに考えて、
玉三郎が夕霧太夫を務める「吉田屋~廓文章」の華やかさと、
「直侍」が物語としてわかりやすいかと思い、夜を選択しました。

玉三郎の打掛はほんとに美しくて、3階から見てもため息が出るほど。
わざわざ背中を見せて立って全体を絵のように見せてくれるポーズも
いつもながらハイライトシーンです。

また、
市川染五郎の「直侍」は、文句なしにかっこよかった!
追手がかかる身であり、全身を耳にして周囲に気を配る緊張感、
そんな身の上でありながら、想い人のところへ急ぐ男の恋心。
染五郎、いい役者になったなあ、とつくづく思いました。

思いのほか、といっては失礼ですが、非常に感動したのが
「二条城の清正」でした。
徳川家康に呼び出され、淀城から二条城へと向かう秀頼(松本金太郎)に
何かあってはならない、必ず無事に淀城まで守る、と
老忠臣の加藤清正(松本幸四郎)がつき従います。

妻・千姫の父親、つまり、舅と婿の関係だからこちらから来たが、
本来なら秀頼さまのほうが上である、そこを間違えるな、と
家康の家臣を気迫でけん制し続ける清正と
孫の金太郎を支える祖父としての幸四郎とが二重写しとなって、
ますます感動的でした。

金太郎の幼な顔に役者魂!がこもるようになり、堂々たる出来栄え。
威厳もあるが自らの立場の危うさにも気づいている秀頼の
聡明さと品格とぜい弱さをたたえ、
船のへさきに立って淀城をまっすぐに見る背中に悲運が漂いました。

2015年9月の歌舞伎座は、ほかに
「双蝶々曲輪日記~新清水浮無瀬の場」と
「紅葉狩」

「紅葉狩」は、
更科姫の市川染五郎があまりに美しいので心奪われました。
染五郎の女方には、これまでそれほどピンと来ていなかったので、
こんなにきれいなお姫様になるとは!
それだけでシアワセな感じがしました。
ただ初役ということもあってか、後半は舞踊にほころびがいくつか。
まだお役が完全に手の内に入っていない様子でした。
まだ公演前半なので、後半にかけて成長することでしょう。

山神は松本金太郎。父子共演です。
しっかりと腰を入れて、堂々の山神です。

この「紅葉狩」でしみじみ思ったのが、
歌舞伎というパフォーマンスの懐の深さです。
音楽の重層。
下手に常盤津節、中央に清元節、上手に義太夫節。
場面場面に応じて歌い分け、奏で分け、
そして鬼女が出現してからは三方の大合奏、大合唱です。
こういう言い方が正しいかはわからないけれど、
ロックとフォークと演歌が特徴を出しつつ、でも消しあわず、
一つの世界を全体として構成しているということですよね。
これまでもこういう場面には出くわしていたと思いますが、
場面と歌とのシンクロが素晴らしかったせいか、非常に強く感じました。

「双蝶々曲輪日記~新清水浮無瀬の場」
発端となるところです。
あまり深く考えず、お茶屋遊びや廓の風情を楽しむ一幕。
廓の女が間夫と客とどう付き合い分けているのかを見たり、
廓の女に入れ揚げて、バカな男たちだなー、と思ったり、
そんなことで人を殺しちゃうんだ、とびっくりしたり、
女は愛する人を逃がすためなら何でもやるんだなー、と感心したり、
同じようなモチーフをさまざまな男と女の間で繰り返す遊びの部分があったり、
とにかく、粋な一幕として肩を張らずに楽しんでください。

詳細はこちらをごらんください。

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