仲野マリの歌舞伎ビギナーズガイド

一度は観てみたい、でも敷居が高くてちょっと尻込み。 そんなあなたに歌舞伎の魅力をわかりやすくお伝えします。 古いからいい、ではなく現代に通じるものがあるからこそ 歌舞伎は400年を生き続けている。 今の私たち、とくに女性の視点を大切にお話をしていきます。

講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」を
東京・東銀座のGINZA楽・学倶楽部で開いています。
歌舞伎座の隣りのビル。
窓から歌舞伎座のワクワクを感じながらのひとときをどうぞ!
これまでの講座内容については、http://www.gamzatti.com/archives/kabukilecture.html
GINZA楽・学倶楽部についてはhttp://ginza-rakugaku.com/をご覧ください。

タグ:市川猿之助

新作歌舞伎が次々に誕生した2015年。

特にアニメでも有名な「ONE PIECE」が歌舞伎になったのは衝撃的でした。

かたや、「あらしのよるに」の原作は、狼のがぶと羊のめいの友情を描いた絵本。

「アニメや絵本を歌舞伎にするなんて、画期的!」と思われた方が多いかもしれませんが、

実は歌舞伎は昔から、このようなことをやってきたのです。

詳しくはこちらをどうぞ!

http://www.eigeki.com/special/column/kabukisaika_n10

今年は新作歌舞伎が目白押しです。
今月、お目見えするのは市川猿之助のスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」

ルフィ/ハンコック/シャンクス    市川猿之助
白ひげ    市川右近
ゾロ/ボン・クレー/スクアード    坂東巳之助
サンジ/イナズマ    中村隼人
ナミ/サンダーソニア    市川春猿
はっちゃん/戦桃丸    市川弘太郎
アバロ・ピサロ    市川寿猿
ベラドンナ    坂東竹三郎
ニョン婆    市川笑三郎
ジンベエ/黒ひげ(ティーチ)    市川猿弥
ニコ・ロビン/マリーゴールド    市川笑也
マゼラン    市川男女蔵
つる    市川門之助      
エース    福士誠治
ブルック/赤犬サカズキ    嘉島典俊
レイリー/イワンコフ/センゴク    浅野和之

・・・なんのこっちゃ~??・・・と思われる方も多数おられると思いますが、
「海賊王に、俺はなる!!」のセリフで有名な「ワンピース」は
大河ドラマなのであります。
誤解を恐れずに言えば、「楼門五三桐」。
あれです、石川五右衛門の。
「楼門五三桐」は、今は南禅寺の山門に上がって「絶景かな、絶景かな~」っていう、
あそこしかほとんど上演されませんが、
実は五段からなる長編で、「五三桐」つまり豊臣秀吉とのからみがあって、
朝鮮出兵とか、当時の中国である明国の話とか、壮大かつ奇想天外な物語。

「ワンピース」にもたくさんのエピソードがつまっています。
その中で、今回「歌舞伎」になったのは「エース」編。
ワンピースの主役であるルフィのお兄さんがエースです。
処刑されようとするお兄さんを助けようと、
ルフィとその仲間が危険を顧みず海軍(権力側)に挑んでいく、
その一点でごらんになってください。
友情あり、家族愛あり、自分の信じる道をまっすぐに行くルフィと
そのルフィを信じる仲間の物語です。

私は「エース」のくだりが歌舞伎になる、と聞いたとき、
ああ、あそこは歌舞伎になるよ、なるほど~。と思いました。

今月の歌舞伎座、見てください。「阿古屋」。お白洲です。
今月の中日劇場、見てください。「俊寛」。島流しになる人が帰れるか帰れないかの話です。
「碇知盛」。源平の合戦で負けていく平家の武将が碇を巻いて海に飛び込む話です。

歌舞伎とは、生きるか死ぬかの瀬戸際で、人が何を考えるのか、そして
その人の誠は誰かに通じるのか、救ってもらえるのか、
救えないとしたら、彼の気持ちは誰かに受け継がれるのか・・・それが歌舞伎の真髄です。

だから、ワンピースは歌舞伎になるはず。
猿之助丈はマンガのイメージの衣裳にすると言っています。、
「歌舞伎の恰好したら歌舞伎なのかといえば、それは違う。
 新作を作るときは、いったい何が歌舞伎なのか、すごく考えてつくります」と
テレビの番組で言っていました。

猿之助丈にとって、歌舞伎とは何なのか。
「ワンピース」を見れば、わかるのかもしれませんね。

詳しくは、こちらをご覧ください。





松竹座では、7月に新橋演舞場で初演した「阿弖流為」が
大阪に進出、再演されます。
スピーディーな展開と、市川染五郎・中村勘九郎・中村七之助の
今でなければ見られない美しく、かつ目にも止まらぬ立ち廻りをご覧あれ!

今月は、自主公演や勉強会も多いです。

おもな自主公演は

第2回「翔の会」(現在高校生の中村鷹之資の勉強会)8/2@国立能楽堂

第7回「挑む!」(尾上松也。特別出演片岡孝太郎)8/8@神奈川芸術劇場(KAAT)

第1回「研の会」(市川右近。ゲストに市川猿之助)8/22、23@国立劇場小劇場

第1回「双蝶会」(中村歌昇・種之助兄弟)8/24、25@国立劇場小劇場

勉強会は

第21回稚魚の会・歌舞伎会合同公演(研修修了生と名題下)8/13~17@国立劇場小劇場
第25回上方歌舞伎会(「若鮎の会」を中心に関西系の若手)8/22、23@大阪国立文楽劇場

公演日数が少なく、小さな劇場を使うこともあり、
チケットはすぐに売り切れてしまうものが多いです。

日ごろはなかなか回ってこない大役の勉強の場として、
出来栄えよりも挑戦、努力が目的の公演ですが、
伸び盛りの若手ならではの輝きを目にする好機であり、
なによりファンにとっては貴重な時間となることでしょう。

今月の歌舞伎座、昼の部の出色は
猿之助の「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」です。
禿姿で出てきたその瞬間、劇場全体がパッと明るく華やぎます。
 これぞ、THE 歌舞伎!
文句なしに観客をハッピーにできる力を、彼は持っています。
切れのよい身のこなしで、
一つひとつの踊りで魅せながら、
スピーディーに次々と役を変えていく。

童熨斗丸→薬売り彦作→番頭新造八重里→座頭亀市
→傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精

見事というほかありません。

猿之助は演じながらも時々役を離れて役者に戻り、
「どうだ!」といわんばかりの笑みを振り撒くことがあるのですが、
今回ばかりは「恐れ入りました」と許してしまいそう。
そのくらい、いい気持ちにさせてもらいました。
本物の芸の力とは、そういうものなのかもしれません。

お囃子、唄もノリノリで、華やかに打ち出しました。

今月の歌舞伎座は、
昼の部が「南総里見八犬伝」と「与話情浮名横櫛」そして
「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」。

「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」は
いわゆる「お富さん」の話。
〽粋な黒塀見越しの松に/あだな姿の洗い髪/
 死んだはずだよお富さん~・・・の、
お富さんを坂東玉三郎が、
「御新造さんへ、お富さんへ、いやさお富!久しぶりだ~な~」の
与三郎を市川海老蔵が務めます。

「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」は、
市川猿之助の六変化で見どころたっぷり。
こちらも見逃せません。

・・・ということで、
なんと3日の初日を待たずにチケットが完売。
人気の玉三郎、海老蔵、猿之助の揃い踏みなので、むべなるかな。
今後、団体キャンセルなどによる戻りチケットを待つか、
幕見に並ぶなどしないと観劇は難しいかもしれません。

夜の部も完売の日が多いですが、
こちらはまだ大丈夫。
「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」の「熊谷陣屋」と
通し狂言「怪談牡丹燈籠(かいだんぼたんどうろう)」。
こちらも見逃せません。

「熊谷陣屋」では海老蔵が
左團次、芝雀、魁春、梅玉などのベテラン勢を向こうにまわし、
熊谷直実を務めます。

「牡丹燈籠」は、
鉄板お峰・玉三郎の胸を借りて
中車が伴蔵に挑戦。
陰影深い人間を演じたらピカ一の俳優・香川照之が、
歌舞伎役者・市川中車としてどこまで伴蔵の心の闇に迫れるか、
近年めきめきと歌舞伎の水になじんできた中車の伴蔵に期待です。
猿之助がどんな圓朝を演じるか、それも興味津々。

詳しい配役やあらすじなどはこちらをどうぞ。

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