仲野マリの歌舞伎ビギナーズガイド

一度は観てみたい、でも敷居が高くてちょっと尻込み。 そんなあなたに歌舞伎の魅力をわかりやすくお伝えします。 古いからいい、ではなく現代に通じるものがあるからこそ 歌舞伎は400年を生き続けている。 今の私たち、とくに女性の視点を大切にお話をしていきます。

講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」を
東京・東銀座のGINZA楽・学倶楽部で開いています。
歌舞伎座の隣りのビル。
窓から歌舞伎座のワクワクを感じながらのひとときをどうぞ!
これまでの講座内容については、http://www.gamzatti.com/archives/kabukilecture.html
GINZA楽・学倶楽部についてはhttp://ginza-rakugaku.com/をご覧ください。

タグ:市川左團次

歌舞伎座では、
「新薄雪物語」が昼夜またいで通し上演されます。
昨年、若手が挑戦して非常に評判のよかった演目ですが、
今回は
大幹部が勢揃いで非常に重厚な布陣。
2月に仁左衛門さんのインタビューをしたときに、
「新薄雪に若手が挑戦するのは無謀とも言えたけれど、
 こうした古典に挑戦することは非常に大事だし、
 結果も成功したと思う」とおっしゃっていました。
ベテランも、大いに刺激されての今回の上演なのではないでしょうか。

昼の「天保遊俠録」は、
勝海舟の父親・勝小吉の物語。
中村橋之助が小吉を演じます。
私はこの作品が大好き。それも橋之助の小吉が大好き!
わかりやすいお話ですし、ビギナーにもおすすめです。
幕見でも楽しめるので、ぜひご覧になってください。

夜の「夕顔棚」は、ほのぼのとした舞踊作品。
とはいえ、
酸いも甘いも知り尽くした通人の
尾上菊五郎が婆、市川左團次の爺では、
どんな面白い掛け合いが飛び出るのか、予測不能!
これも仕事帰りに幕見しても楽しいかもしれませんね。

今月は、
博多座が充実しています。
四代目中村鴈治郎の襲名披露公演。

注目は「芸道一代男」。
これは初代中村鴈治郎が世に出るまでを描いた作品ですが、
香川照之が歌舞伎の世界に入るまでと重なる部分もあり、
この作品に脇役とはいえ市川中車(香川照之)が出るのには感慨深いものがあります。

5月の明治座で中車の芝居を観ましたが、
歌舞伎を始めた当初に比べ、なんと歌舞伎俳優らしくなったことか!
どれだけ努力したのか、本当に感心したので、
なおのこと博多に飛んでいきたい気分です。

ほかに松竹座で片岡愛之助の「鯉つかみ」。
先月明治座で上演していたものが大阪に行きます。

市川猿之助は巡業「特別舞踊公演」が続きます。
6/6(土)は羽田空港のターミナルで公演があり、お練りもあるとのこと。
ターミナル内に江戸の町並みを意識したエリアがあり、
江戸舞台もあるので、そこで上演するようです。

羽田中村座2

羽田中村座

羽田日本橋

羽田日本橋2
ここをお練りするみたいですねー。






各公演、詳しいことは、こちらでチェックしてみてください。





通し狂言なので、本当は一日で、
昼夜別に観るとすれば昼→夜の順番での観劇を、と、
皆さんに勧めている当の本人の私が、
時間の都合で夜の部を先に観ることと相成りました。

(但し、私は昼の作品「加茂堤」「筆法伝授」「道明寺」ともに観たことがありますし、
 全段を通しでやった花組芝居の舞台も観て、
 全段を詳しく解説した本も読んではいますので、
 どうお話がつながるのかは知ってのことですが)

夜の部、一言でいって、オススメです!

まずは「賀の祝」から。

「賀の祝」は、
父親の七十の祝に松王丸、梅王丸、桜丸の、
三つ子とその妻が集まるという設定で始まる話です。

最初は、松王丸と梅王丸が
大人のくせに子どもっぽい兄弟げんかをしたり、
それぞれの妻が夫自慢をしたりと、
笑いが絶えないのですが、
後半は、
桜丸切腹という非常に重い展開となります。

桜丸(尾上菊之助)の若妻・八重を演じる中村梅枝が
若さ、美しさ、演技の深さを揃え、絶品です。

歌舞伎はデフォルメの芸術ですから、
「よよよ」と泣き伏す場面や
切腹を何度も遮ろうとする動作は、
ややもするとおおげさだったり、
単なるお約束に見えてしまうときがあります。

ところが梅枝の八重は、
ひとつひとつの所作が古典的でありながら、
愛する人を死なせたくない思いが
現代を生きる私たちにストレートに届く!

八重という若い女性の心をしっかりとつかみ、
さながら文楽人形に魂が乗り移ったかのようでした。

もちろん、
菊之助の桜丸もこれ以上ない美しさ!
伏し目がちでほとんど表情をくずさない中、
最後の最後に父・白大夫を見上げる瞳の切なさよ!

静かな語り口ですが、うるおいと気品あふれる声は
劇場の隅々にまで染みわたります。

白大夫の市川左團次、
念仏を唱える声に親の愛がつまっていて
思わず涙。

本当に素晴らしいです。
ぜひともご覧ください。









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