仲野マリの歌舞伎ビギナーズガイド

一度は観てみたい、でも敷居が高くてちょっと尻込み。 そんなあなたに歌舞伎の魅力をわかりやすくお伝えします。 古いからいい、ではなく現代に通じるものがあるからこそ 歌舞伎は400年を生き続けている。 今の私たち、とくに女性の視点を大切にお話をしていきます。

講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」を
東京・東銀座のGINZA楽・学倶楽部で開いています。
歌舞伎座の隣りのビル。
窓から歌舞伎座のワクワクを感じながらのひとときをどうぞ!
これまでの講座内容については、http://www.gamzatti.com/archives/kabukilecture.html
GINZA楽・学倶楽部についてはhttp://ginza-rakugaku.com/をご覧ください。

タグ:中村時蔵

第17回歌舞伎彩歌は「文七元結」です。
シネマ歌舞伎でおなじみの中村勘三郎バージョンとはまた違った
キレッキレな菊五郎親分の江戸っ子ぶりをお楽しみください。

詳しくはこちらへどうぞ!

http://www.eigeki.com/special/column/kabukisaika_n17

今月の松竹座は、
昼が「鈴ヶ森」「雷船頭」「ぢいさんばあさん」、
夜は「 絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)」の通し狂言です。

夜の「絵本合法衢」では
先月、「新薄雪物語」の「花見」で
悪人・秋月大膳をスケール大きく演じた片岡仁左衛門の
悪人二役を演じ分けるところに注目。
その仁左衛門、
昼の部「ぢいさんばあさん」では、
まっすぐながら気短なため一生を棒に振ってしまった青年と、
その彼が苦難を越えてまるくなった老年とを演じ分けます。
泣けますよ、「ぢいさんばあさん」。
愛する夫の不在をひたむきに生き、再会を夢みる女性・るんを
時蔵が演じます。
その時蔵、「絵本合法衢」ではうんざりお松。
上品な武家の若妻るんと対照的に悪婆! 昼夜で女方の両極端を見せてくれます。
ほかに時蔵は「雷船頭」でいなせな踊もりも。

今月は、国立劇場にも大きな注目が集まっています。
女方として人気・実力とも評価の高い尾上菊之助が、
これまでに演じたことのないタイプの立役(男の役)に挑戦。
「義経千本桜」の「渡海屋(とかいや)・大物浦(だいもつのうら)」の
通称「碇知盛」です。
屋島の戦いで義経に追い詰められ、
死しても絶対に自分の首をとられまいと
碇を自身の体に巻きつけて入水していったとされる
勇猛な平知盛の最期を描いた作品です。

この「碇知盛」は、菊之助にとって舅である中村吉右衛門の当たり役。
菊之助はいったいどんな知盛を演ずるのか、
彼の目指す知盛はどんな人物なのか、
その目指すところまで、楽日までに到達できるのか、
さまざまに興味をかきたてる演目です。
こちらも3日からですが、歌舞伎座なみにチケットは完売。
普通の興行ではなく「歌舞伎鑑賞教室」で、
梅枝の内侍の局、萬太郎の義経、
亀三郎の相模五郎、尾上右近の入江丹蔵と
いずれも若手が大役に挑戦。
弁慶は市川團蔵で、脇を固めます。

詳しくはこちらから。


ほかに、巡業の東コースが松竹大歌舞伎
「中村翫雀改め四代目 中村鴈治郎襲名披露」。

「双蝶々曲輪日記」のうち「引き窓」と「連獅子」に
「口上」があります。
「引窓」は玩辞楼十二曲の一つ。
南与兵衛(南方十次兵衛)の鴈治郎のほか、
女房お早に中村壱太郎、濡髪長五郎に尾上松緑が扮します。
「連獅子」は、中村扇雀と虎之介の親子獅子です。
亀寿と亀鶴の宗論も楽しそうですね!

巡業ですので、各地で上演します。
会場や日時はこちらでお確かめください。

同じ巡業でも
東コースが上方成駒家なら、
中央コースは江戸の成駒屋。
中村橋之助一家が中心です。
「天衣紛上野初花」の「河内山(こうちやま)」と
「藤娘」「芝翫奴(しかんやっこ)」。
児太郎が藤娘を、国生が芝翫奴を踊ります。

会場や日程はこちらにて、必ずお確かめ下さい。

歌舞伎座は、
松竹座から1日遅れて今日が初日です。

昼の部は
「吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)」「毛谷村(けやむら)」
「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」と
名作が目白押しです。

私がもっとも楽しみにしているのは「積恋雪関扉」
小野小町姫/傾城墨染実は小町桜の精の菊之助。
舞踊の大曲ですから、舞の名手としての菊之助をじっくり味わいたいです。

「吉例寿曽我」はオールスターキャスト勢揃いで見ると華やかですが、
今回はぐっと若返っています。
存在感と憎々しさ抜群の中村歌六が工藤祐経なので、
びしっと場を引き締めて統率してくれることでしょう。
荒事が好き、という中村歌昇の曽我五郎が楽しみ。
一方
「毛谷村」は菊五郎/時蔵の鉄板で、安定感抜群。
大人の芸が観られますね。

私は「彦山権現〜」のお園という女性が大好きです。
講座でも取り上げましたが、
男に生まれたかったデキる女のプライドとか、
長女だからすべての責任をとろうとしてしまうところとか、
本当に感情移入できちゃう女性です。
「毛谷村」の段だけだとなかなかわからないですが、
そういう性格を、
時蔵さんがうまく浮かび上がらせてくれることでしょう。

夜の部は
「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」と
「神田祭」「筆屋幸兵衛」。

「一谷嫩軍記」は、
よくかかる「熊谷陣屋」ではなく、その前段の「陣門」と「組打」が出ます。
「組打」は、
「平家物語」にある、波打ち際で熊谷直実が敦盛の首を取る場面です。
美しい若武者姿も一見の価値あり。

「神田祭」は江戸っ子のいなせぶりを理屈抜きで楽しんでください。

逆にホネのある物語が好きな方には「筆屋幸兵衛」
明治維新で落ちぶれる元武士とその家族の運命を描く
河竹黙阿弥の作品です。
こういう心理ものでは、
シェイクスピアなどの舞台も数多く踏んだ松本幸四郎が
役柄に深い陰影を刻みます。

詳しくは、こちらをどうぞ。

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