仲野マリの歌舞伎ビギナーズガイド

一度は観てみたい、でも敷居が高くてちょっと尻込み。 そんなあなたに歌舞伎の魅力をわかりやすくお伝えします。 古いからいい、ではなく現代に通じるものがあるからこそ 歌舞伎は400年を生き続けている。 今の私たち、とくに女性の視点を大切にお話をしていきます。

講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」を
東京・東銀座のGINZA楽・学倶楽部で開いています。
歌舞伎座の隣りのビル。
窓から歌舞伎座のワクワクを感じながらのひとときをどうぞ!
これまでの講座内容については、http://www.gamzatti.com/archives/kabukilecture.html
GINZA楽・学倶楽部についてはhttp://ginza-rakugaku.com/をご覧ください。

タグ:中村勘九郎

2002年、
歌舞伎を愛してやまない劇団☆新感線の主宰者いのうえひでのりが、
市川染五郎を主役に迎え中島かずきとともにつくりあげた
「いのうえ歌舞伎」の名作「アテルイ」。
この作品が2015年、
歌舞伎
NEXT「阿弖流為」と銘打って、「全員歌舞伎役者」で上演されました。
大和朝廷側で蝦夷征圧の命を受ける坂上田村麻呂(さかのうえたむらまろ・中村勘九郎)と
蝦夷の勇者・阿弖流為(あてるい・市川染五郎)の、
雄々しく潔い友情と、哀しい結末。
謎の女性剣士・立烏帽子(たてえぼし・中村七之助)と、
彼らの運命をにぎる蝦夷の神・アラハバキ。
劇団☆新感線では2人の女優が演じていた立烏帽子と鈴鹿を
中村七之助が1人二役で演じることにより、
さらにストーリーがわかりやすくなっています。
市村萬次郎・坂東彌十郎らベテラン勢も活躍。
女形のもつ独特の存在感と、
歌舞伎役者の圧倒的身体能力を如何なく見せつけた本作。お見逃しなく!
詳しくは→ 

 

第15回歌舞伎彩歌は、コクーン歌舞伎についてです。
1994年、十八世中村勘三郎(当時中村勘九郎)が始めたコクーン歌舞伎。
今や当たり前のように歌舞伎役者と現代劇俳優が一緒に演じる
その源がここにあります。

http://www.eigeki.com/special/column/kabukisaika_n15

私の大好きな「お国と五平」について、
「歌舞伎彩歌」で書かせていただけることになりました!
谷崎潤一郎の作です。
一風変わった、でも忘れ難く、深い作品。
坂東三津五郎さん、中村扇雀さん、中村勘太郎(当時)さんの3人の舞台。
ぜひ以下にお立ち寄りください。

http://www.eigeki.com/special/column/kabukisaika_n05

今年は新作歌舞伎が目白押しです。
今月、お目見えするのは市川猿之助のスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」

ルフィ/ハンコック/シャンクス    市川猿之助
白ひげ    市川右近
ゾロ/ボン・クレー/スクアード    坂東巳之助
サンジ/イナズマ    中村隼人
ナミ/サンダーソニア    市川春猿
はっちゃん/戦桃丸    市川弘太郎
アバロ・ピサロ    市川寿猿
ベラドンナ    坂東竹三郎
ニョン婆    市川笑三郎
ジンベエ/黒ひげ(ティーチ)    市川猿弥
ニコ・ロビン/マリーゴールド    市川笑也
マゼラン    市川男女蔵
つる    市川門之助      
エース    福士誠治
ブルック/赤犬サカズキ    嘉島典俊
レイリー/イワンコフ/センゴク    浅野和之

・・・なんのこっちゃ~??・・・と思われる方も多数おられると思いますが、
「海賊王に、俺はなる!!」のセリフで有名な「ワンピース」は
大河ドラマなのであります。
誤解を恐れずに言えば、「楼門五三桐」。
あれです、石川五右衛門の。
「楼門五三桐」は、今は南禅寺の山門に上がって「絶景かな、絶景かな~」っていう、
あそこしかほとんど上演されませんが、
実は五段からなる長編で、「五三桐」つまり豊臣秀吉とのからみがあって、
朝鮮出兵とか、当時の中国である明国の話とか、壮大かつ奇想天外な物語。

「ワンピース」にもたくさんのエピソードがつまっています。
その中で、今回「歌舞伎」になったのは「エース」編。
ワンピースの主役であるルフィのお兄さんがエースです。
処刑されようとするお兄さんを助けようと、
ルフィとその仲間が危険を顧みず海軍(権力側)に挑んでいく、
その一点でごらんになってください。
友情あり、家族愛あり、自分の信じる道をまっすぐに行くルフィと
そのルフィを信じる仲間の物語です。

私は「エース」のくだりが歌舞伎になる、と聞いたとき、
ああ、あそこは歌舞伎になるよ、なるほど~。と思いました。

今月の歌舞伎座、見てください。「阿古屋」。お白洲です。
今月の中日劇場、見てください。「俊寛」。島流しになる人が帰れるか帰れないかの話です。
「碇知盛」。源平の合戦で負けていく平家の武将が碇を巻いて海に飛び込む話です。

歌舞伎とは、生きるか死ぬかの瀬戸際で、人が何を考えるのか、そして
その人の誠は誰かに通じるのか、救ってもらえるのか、
救えないとしたら、彼の気持ちは誰かに受け継がれるのか・・・それが歌舞伎の真髄です。

だから、ワンピースは歌舞伎になるはず。
猿之助丈はマンガのイメージの衣裳にすると言っています。、
「歌舞伎の恰好したら歌舞伎なのかといえば、それは違う。
 新作を作るときは、いったい何が歌舞伎なのか、すごく考えてつくります」と
テレビの番組で言っていました。

猿之助丈にとって、歌舞伎とは何なのか。
「ワンピース」を見れば、わかるのかもしれませんね。

詳しくは、こちらをご覧ください。





松竹座では、7月に新橋演舞場で初演した「阿弖流為」が
大阪に進出、再演されます。
スピーディーな展開と、市川染五郎・中村勘九郎・中村七之助の
今でなければ見られない美しく、かつ目にも止まらぬ立ち廻りをご覧あれ!

まだ菊之助さんの知盛のレビューを書いていませんが、
取り急ぎ、8月の歌舞伎のご紹介を先にいたします。

歌舞伎座では、納涼歌舞伎が三部制で上演されます。

第一部は「おちくぼ物語」と「棒しばり」。
レジェンドになった故勘三郎丈と故三津五郎丈の「棒しばり」に
勘三郎の息子・勘九郎と、三津五郎の息子・巳之助が
二人して挑みます。
「おちくぼ物語」は和製シンデレラのようなお話。
七之助がシンデレラです。

第二部は「ひらかな盛衰記~逆櫓」と「京人形」。
「京人形」は、七之助の京人形に、勘九郎の左甚五郎。
思い描いただけで絵になる二人です。期待してます。
「逆櫓」は源平時代に取材した、
義経に討たれた木曽義仲ゆかりの者たちの物語で、
前半は「実は」の応酬、後半は立ち廻りが見どころです。
もう一つ、サブタイトルにもある「逆櫓(さかろ)」という技術を
習いに来る船頭3人の場面も有名。
国生、宣生、鶴松が、息を合わせてどこまで「櫓」を扱えるか、
それを見るのも楽しみの一つです。

第三部は「芋掘り長者」と「祇園恋づくし」。
「芋掘り長者」は、三津五郎が復活させた作品で、
踊りのヘタな藤五郎の代わりにお面をかぶって踊りを披露する治六郎が、
「仮面をとれ」と言われてしまう喜劇で、治六郎に巳之助が扮します。
「祇園恋づくし」は、さきごろ94歳で亡くなった小山三さんが
「今度これをやるといいわよ」とおっしゃっていたという演目。
祇園祭を背景に繰り広げられる、明るい恋物語です。

いつもと違って、11時、14時半、18時の開演。
特に第三部はお仕事帰りに予定できる時間ですね。

大阪では新歌舞伎座で「新・水滸伝」
市川右近を中心とした21世紀歌舞伎組が、
元祖「スーパー歌舞伎」を繰り広げます。
斜めの宙乗りあり。

市川海老蔵の六本木歌舞伎「地球投五郎宇宙荒事」
東京・六本木の初演を経て、
8月前半は名古屋中日劇場、後半は大坂オリックス劇場で上演されます。

夏は自主公演も多いです。
そのことは、また明日。

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