仲野マリの歌舞伎ビギナーズガイド

一度は観てみたい、でも敷居が高くてちょっと尻込み。 そんなあなたに歌舞伎の魅力をわかりやすくお伝えします。 古いからいい、ではなく現代に通じるものがあるからこそ 歌舞伎は400年を生き続けている。 今の私たち、とくに女性の視点を大切にお話をしていきます。

講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」を
東京・東銀座のGINZA楽・学倶楽部で開いています。
歌舞伎座の隣りのビル。
窓から歌舞伎座のワクワクを感じながらのひとときをどうぞ!
これまでの講座内容については、http://www.gamzatti.com/archives/kabukilecture.html
GINZA楽・学倶楽部についてはhttp://ginza-rakugaku.com/をご覧ください。

カテゴリ: 観劇ガイド

今月、もっとも注目されているのが
新橋演舞場で上演される新作歌舞伎
「阿弖流為(あてるい)」です。

アテルイとは、8世紀末、大和朝廷の北進を阻んだ蝦夷の英雄の名。
しかし史実で確認できることは少なく、そのため彼を主人公としたたくさんの作品が生まれています。
2002年、同じ新橋演舞場で劇団☆新感線が
市川染五郎を主役にして初めて上演した『アテルイ』 。
今回は染五郎のほか、中村勘九郎、中村七之助などを配し、
すべての役を歌舞伎俳優で固めての完全歌舞伎化です。
中島かずきのディープな脚本、いのうえひでのりのスピーディーなアクション、
いのうえ歌舞伎のすべてを知り尽くす染五郎のリーダーシップが
新作歌舞伎としての「阿弖流為」をいかに花開かせるか、
絶対に見逃せません!

くわしくはこちらをどうぞ。

この「阿弖流為」、10月には大阪松竹座でも上演します。



ということで、今月の歌舞伎はどれも魅力的。
いずれもビギナーズにもわかりやすいものなのですが、
困ったことにチケット品薄。
もし手に入るようでしたら、迷わずゲットしてください。

ただ、
私は定価以上で求めたことはありません。
世の中にはチケットオークションというものがあり、
定価の何倍もの値段で取引されるプラチナチケットがあります。
お金に糸目をつけないで払える人はいいですが、
それが当たり前になってしまうと、
お金のない人は観劇できないことになってしまうし、
事実、
オークション転売目的で発売初日に何枚も買う人が
世の中にはいると聞きました。

演劇を愛する人たちは、
できるだけそういうシステムには載らず、
譲渡するときは、定価を上限に取引したいものです。

私がよく使うチケット交換・譲渡サイトはこちら
必ずゲットできるわけではありませんが、
とれない場合はこれもご縁とすっぱりあきらめ、
そこで使わなかったお金が
次の素晴らしい舞台を観るためにまわるのだと考えるようにしています。

今月も、
みなさんと歌舞伎の素敵な出会いがありますように!

今月の松竹座は、
昼が「鈴ヶ森」「雷船頭」「ぢいさんばあさん」、
夜は「 絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)」の通し狂言です。

夜の「絵本合法衢」では
先月、「新薄雪物語」の「花見」で
悪人・秋月大膳をスケール大きく演じた片岡仁左衛門の
悪人二役を演じ分けるところに注目。
その仁左衛門、
昼の部「ぢいさんばあさん」では、
まっすぐながら気短なため一生を棒に振ってしまった青年と、
その彼が苦難を越えてまるくなった老年とを演じ分けます。
泣けますよ、「ぢいさんばあさん」。
愛する夫の不在をひたむきに生き、再会を夢みる女性・るんを
時蔵が演じます。
その時蔵、「絵本合法衢」ではうんざりお松。
上品な武家の若妻るんと対照的に悪婆! 昼夜で女方の両極端を見せてくれます。
ほかに時蔵は「雷船頭」でいなせな踊もりも。

今月は、国立劇場にも大きな注目が集まっています。
女方として人気・実力とも評価の高い尾上菊之助が、
これまでに演じたことのないタイプの立役(男の役)に挑戦。
「義経千本桜」の「渡海屋(とかいや)・大物浦(だいもつのうら)」の
通称「碇知盛」です。
屋島の戦いで義経に追い詰められ、
死しても絶対に自分の首をとられまいと
碇を自身の体に巻きつけて入水していったとされる
勇猛な平知盛の最期を描いた作品です。

この「碇知盛」は、菊之助にとって舅である中村吉右衛門の当たり役。
菊之助はいったいどんな知盛を演ずるのか、
彼の目指す知盛はどんな人物なのか、
その目指すところまで、楽日までに到達できるのか、
さまざまに興味をかきたてる演目です。
こちらも3日からですが、歌舞伎座なみにチケットは完売。
普通の興行ではなく「歌舞伎鑑賞教室」で、
梅枝の内侍の局、萬太郎の義経、
亀三郎の相模五郎、尾上右近の入江丹蔵と
いずれも若手が大役に挑戦。
弁慶は市川團蔵で、脇を固めます。

詳しくはこちらから。


ほかに、巡業の東コースが松竹大歌舞伎
「中村翫雀改め四代目 中村鴈治郎襲名披露」。

「双蝶々曲輪日記」のうち「引き窓」と「連獅子」に
「口上」があります。
「引窓」は玩辞楼十二曲の一つ。
南与兵衛(南方十次兵衛)の鴈治郎のほか、
女房お早に中村壱太郎、濡髪長五郎に尾上松緑が扮します。
「連獅子」は、中村扇雀と虎之介の親子獅子です。
亀寿と亀鶴の宗論も楽しそうですね!

巡業ですので、各地で上演します。
会場や日時はこちらでお確かめください。

同じ巡業でも
東コースが上方成駒家なら、
中央コースは江戸の成駒屋。
中村橋之助一家が中心です。
「天衣紛上野初花」の「河内山(こうちやま)」と
「藤娘」「芝翫奴(しかんやっこ)」。
児太郎が藤娘を、国生が芝翫奴を踊ります。

会場や日程はこちらにて、必ずお確かめ下さい。

4/10(金)、講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」の第6シリーズが始まりました。
16回目となる4月に取り上げたのは、
近松門左衛門の「心中天網島」です。

昨日も書きましたが、
今月歌舞伎座の中村鴈治郎襲名披露公演夜の部で上演されている
「河庄(かわしょう)」は、
その上の巻、発端の部分にあたります。

今月の舞台で
今までと違った治兵衛を感じた私は、
4月10日の講座での講義内容を一部変更し、

「心中天網島」を
上の巻「河庄」=治兵衛の物語
中の巻「紙屋内」=おさんの物語
下の巻「道行名残の橋づくし」=小春の物語

と位置付けて、3人それぞれの心理に新たな視点で迫りました。

また、
「河庄」と同じく玩辞楼(がんじろう)十二曲(中村鴈治郎の得意演目)に名を連ねている
「天網島時雨炬燵(てんのあみじま・しぐれのこたつ)」にも言及しました。
これは近松の「心中天網島」初演から数えて約半世紀後に、
近松半二が「心中紙屋治兵衛」として改作した際、
「紙屋内」のラストシーンを大幅に変更してできあがったもので、
「河庄」と同じく、単体で(見取り狂言)上演されます。

原作である近松門左衛門の「心中天網島」と
改作された近松半二の「心中紙屋治兵衛」との比較もして、
「冥途の飛脚」や「女殺油地獄」なども含め、
近松の名作は時代を200年も先取りしていたことを確信しました。

いや~、
近松は本当にすごいです。
近松の原作通りに上演し続けていたら、
心中は減ったというのが私の持論。
リアルです。容赦ないです。
 

4月になりました。
3月のレビューがまだいくつか作成中ですが、
先に今月の歌舞伎公演についてご紹介します。

歌舞伎座では四代目中村鴈治郎襲名公演
1月2月と大阪で行われ、いよいよ東京公演です。
今回の口上は芝居仕立てということで、
どんなふうになるのか楽しみ!
2日からです。
詳しくはこちらをどうぞ。
 
合わせて歌舞伎ギャラリーで「がんじろはん!」展を開催しており、
とても充実しているので、ぜひおでかけください。
ギャラリーだけ見ることのできる施設ですので、お気軽に。
詳しくはこちら

あとは、
なんといっても平成中村座
本日初日を迎えます。
かつて中村座のあった浅草に仮設の芝居小屋を建てての公演。
今回は、浅草寺の裏です。
父・中村勘三郎の思いを受け継いで、
中村勘九郎、七之助兄弟が
勘三郎ととに走ってきた中村橋之助とともに、
浅草の地に新座長を迎えての一歩を刻みます。5月3日まで。

演目や公演時間、配役など詳細はこちらをどうぞ。

もう一つ、
昔ながらの芝居小屋を愛した勘三郎が何度も出演した
金丸座での第31回四国こんぴら歌舞伎大芝居 
今回は中村時蔵、尾上菊之助、尾上松緑、中村梅枝などが出演します。
公演は11日から26日までです。詳しくは、こちらからどうぞ。

 近くの公民館では、30周年を記念して
これまでの公演やお練りの記録展示も。 
こちらから、歴代公演のポスターが見られます。


名古屋では、
中日劇場で四月花形歌舞伎
昼は市川猿之助の「雪之丞七変化」、
夜は片岡愛之助の「新・八犬伝」など、
人気役者の魅力がはじける公演となりそう。
4日から。
詳しくはこちらをどうぞ。

後半になりますと、
京都の南座で「市川海老蔵特別舞踊公演」も始まります。
市川道行改め市川九團次襲名披露の場でもあるので、口上がつきます。
4/17〜4/25。
詳しくはこちら

春爛漫、歌舞伎も百花繚乱で、
どれを見ようか迷いますね。
全部見ようとすると、
それはそれで日程調整がタイヘン。
でも、そんな「タイヘン」 も含め、
芝居見物のウキウキワクワクを楽しんでみてください。

昨日に続いて、
夜の部の「寺子屋」のレビューを書きたいのですが、
今日はその前に、
私が歌舞伎を見始めたときの率直な疑問について書きます。


「寺子屋」は
「菅原伝授手習鑑」という、いわば大河ドラマ、連続ドラマの中でも
非常に人気のある場面です。
でも「寺子屋」って江戸時代の塾のことですよね。

菅原道真は平安時代の人なのに、
なぜに「寺子屋」??



歌舞伎ビギナーズにはまず理解不能です。
私がそうでした。
越えねばならぬ、第一ハードル。

こういう時代考証無視の作品、実は歌舞伎に多いんです。
でも今はもう慣れました(笑)。っていうか、
そういうシステムだということをわかれば何の問題もありません。

ちょっと説明しますね。

まず、
歌舞伎では「時代物」「世話物」という区別があって、
「時代物」というのは、私たちが今「時代劇」といっているものです。
江戸時代の人にとって、
「時代劇」は、平安時代だったり、室町時代だったり、戦国時代だったりします。
そして
「世話物」というのが、江戸時代の「現代劇」で、
江戸時代の風物、とくに商人、町人の生活が色濃く描かれます。
というのも、江戸時代、今の政治のことを描くのはご法度。
だから「現代劇」はホームドラマや恋愛ドラマに限られました。

今回歌舞伎座で上演されている「菅原伝授手習鑑」は時代物
江戸時代の時代劇です。

そして「時代物」の多くに、
「時代世話」という場面が挿入されています。
これは何かといいますと、
すごーーーーくひらたくいえば、
「時代劇の一部分を現代的にしたもの」

え?
そんなことできるの?
・・・とお思いかもしれません。
でもけっこう、私たちもやってるんです。

たとえば「必殺!仕掛人」シリーズ
時代劇に現代性を入れ込んだものとしては草分けではないでしょうか。

「ムコ殿!」で有名な、中村主水の家庭内でのやりとりは、
「時代劇」というよりホームドラマです。

「時代劇」は、
今と異なる空間を楽しむものでありながら、
やはりどこかで自分と共通のものを探して共感できなければ
「面白い」とは感じられません。

だから制作側は
「昔の話を昔のままにやるとわかりにくいので、
 今の人がすぐにピンとくるように、何か工夫が必要だ」と
学園ドラマやホームドラマっぽくしてみたり、
テーマも、
歴史的事実がどうのこうのより、
公金横領とか、保険金殺人とか、
そのときの大事件を時代劇にアレンジしたりして
身近に感じてもらおうとする。

人気のある時代劇というのは、
少なからず「現代」の空気を含んでいるものなのです。

そういう工夫の一つとして、
歌舞伎や人形浄瑠璃では
より身近に感じられ、登場人物の立場や心情がつかみやすいように
風俗を現代的、つまり江戸時代的にしている、と考えてください。

たしかに時代考証デタラメです。

昼の部でも、
菅原道真は平安時代の恰好(直衣直垂)でいるのに、
「道明寺」に出てくる道真のお母さんは
どう見ても江戸時代の衣裳。・・・・でも・・・・


「いいんです!」


いいんです、そんなことは。
フィクションですから。つくりものですから。
泣ければ。楽しければ。わかりやすければ。

それに先ほど述べましたが、
ダイレクトに社会批判ができないくくりの中、
作者たちは「時代劇」の枠(世界、といいます)を借りて、
今そこにある問題を、たくみに描いてみせたのです。
すごいでしょ?

「でもさー、急に衣裳変わったり、時代が飛んだり、
 かえって複雑になって、ついていけなくない?」

・・・と今つぶやいたアナタ!

同じこと、
現代でもけっこうしてません?

織田信長が
東京ガスのCM「ガス・パッ・チョ」で箪笥から出てきたり、
お茶が飲みたくなって「利休も呼んじゃった!」とか。

トヨタのCMでは車で高速を走っていたり、
さっき武将姿だったと思ったら、今度は洋服だったり。

桃太郎と金太郎と浦島太郎が友達で、
浦島太郎が玉手箱あけたら携帯出てきたり、

皆楽しいでしょ?
わかりやすいでしょ?

江戸の人たちも、そういう楽しみ方をしていた、ということです。

キャラクターからかけ離れていなければ、
(役の性根がおさえられていれば)
よいアレンジはオリジナリティとして評価され、
人気も出て再演が重ねられ、
そして古典になっていって今に至ります。

冒頭に申しあげたように、
「寺子屋」はとても人気のある作品。
上にいろいろ書きましたが、
この「寺子屋」の段だけで、
非常に密度の濃いサスペンスドラマになっています。
(衣裳的にも、ほぼ全部江戸時代ですし、
 菅丞相は出てこないし、
 いわゆる「時代劇」として普通に楽しめます)

火曜サスペンス風に言えば
「京都殺人案内・山間の塾殺人事件~元エリート校教師、新入生を殺す」
みたいなお話です。

夫婦で殺人計画を練る場面の緊張、
その後のどんでん返し、
見どころ満載です。

とても面白かったので、ぜひご覧ください!
オススメ!
レビューを明日書こう、と思ったのですが、
これは昼の「筆法伝授」を先に書かないと。
せっかくの通し狂言なんで・・・。

(だから昼を先に観なくちゃいけないのに、すみません)

レビューのほうは下旬になります。

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