スーパー歌舞伎「新・水滸伝」、面白かったです!

私はこれまで「水滸伝」にも「梁山泊」にもあまり感情移入することなくやってきたので、
原作との関係はよくわからないまま、
ただ目の前の物語を楽しみました。

主人公は市川右近扮する林冲なのですが、
ドラマの中でもっともウェイトを占めていたのは
王英(市川猿弥)と、敵ながら彼に一目ぼれされる青華(市川笑也)。
猿弥が「見た目は醜男だが心がチョーイケメン」な男を清々しく演じる。
青華は「纏足(てんそく=女の子の足を小さくするために縛って成長させなくする)」をしていない女。
だからこそ剣の名手となったのだけれど、
婚約者の祝彪(市川猿四郎)は彼女を「できそこないの女」と蔑む。
自分自身を恥じて生きる青華に対し、
「そのままのそなたが美しい!」とアタックしまくる王英。
王英のラブコールに対し、かたくなに自分を閉ざす青華に対し、
王英の仲間であるお夜叉(市川春猿)は
「あんたの足は纏足はしていないけれど、自分で自分の心を常識で縛っている」と言い放つ。

「ありのままに」まあ、歌舞伎流「雪アナ」ともいえるけれど、初演はこちらのほうが早いです。

スーパー歌舞伎といえば、宙のりがお約束ですが、
宙のりは2回、3階からの大飛翔は1回だけでした。
でも、物語の中でとても大切なところで、必然性のある宙のりです。
飛躍はかなりの時間で、
どこの席に座る観客にも大サービスでした。

サービスといえば、
1階席を走り回る立ち廻りが通常なら見えない上階席の観客のために、
鏡張りにするアイデアも素敵です。
鏡の前で二倍に揺らめくランタンのともしびも美しかった。

何度も再演されている作品には、
いつの時代にも愛される普遍的なテーマがあり、
エンタメとしての創意工夫が凝らされていると改めて感心しました。

*大阪・上本町の新歌舞伎座も、今回が初めてです。

新歌舞伎座