昨日は一人の役者が複数の人物を演じている、という話をしました。

仁左衛門は「花見」で秋月大学、「詮議」「広間・合腹」で園部兵衛、
菊五郎は「花見」が奴妻平で「詮議」は葛城民部です。

逆に薄雪姫の役は、3人が務めます。
「花見」が中村梅枝、「詮議」が中村児太郎、
「広間・合腹」と「正宗内」が中村米吉です。

お寺参詣で左衛門に一目惚れしてしまった薄雪姫は、
文を渡したり、屋敷に忍んできてと頼んだり、
お姫様ながら積極的です。
その「積極的」な気持ちと、
だからこそ大好きな人と家族を窮地に立たせてしまった申し訳なさと、
ああ、こんなイノセントなお姫さまがズンズンアタックしてきたら、
オトコ、ひとたまりもないなー、っていう説得力が
すべて揃っていたのは米吉だったと思います。

梅枝はお姫様らしくはありましたが、
肝心の付け文のあたりがちょっと弱かった。
そんなに好きなの?っていうところが伝わってきませんでした。

児太郎も、
自分の書いた付け文にある「刀」の絵の下に「心」で「忍ぶ」の判じ物が
献上の刀にやすりを入れての調伏をするという謀反の証拠にされている、
とわかったときの驚きや怖ろしさが見えませんでした。

米吉は
「正式な嫁でもないのにこんなにやさしくしてもらって心苦しい」
「ああ、全部私が悪いのにごめんなさいごめんなさい」の気持ちが
さして見せ場があるわけではないのに全身から発せられるのがわかりました。
それでいて、
「やっぱり一人じゃ逃げたくない、あの人と一緒がいい」っていうワガママ娘で、
そういう愚かなところがあるからこそ、
「忍んできてね」と言っちゃったんだろう、と納得してしまいました。

米吉なら「花見」や「詮議」の薄雪姫をどう演じたか、
他の二人には気の毒ですが、見てみたいと思いました。