新春浅草歌舞伎でもう一つ、
感心したのが「仮名手本忠臣蔵」の五段目、六段目です。

五段目 山崎街道鉄砲渡しの場、同・二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場

配役は以下の通り。
      
早野勘平 が 尾上松也、おかるが中村児太郎。
おかるの母おかやは中村芝喜松、父・与市兵衛が澤村大蔵。
四十七士で勘平の友、千崎弥五郎が中村隼人、重鎮不破数右衛門が中村歌昇。
おかるが売られる遊郭・一文字屋の女主人お才が中村 歌女之丞、
お才と一緒にやってくる判人(女衒)の源六が 中村 蝶十郎、
夜の山崎街道でおかるの父を殺す斧定九郎が坂東巳之助です。

きっちりと演じた皆にまず拍手。
松也・児太郎のコンビが恋する若夫婦をとても若々しく、
感情豊かで見ごたえ十分。

松也は声がのびやかで、さすが音羽屋。
菊五郎や菊之助の舞台を感じました。
切腹してからの「いかなればこそ勘平は・・・」のくどきは、
非常に切羽詰った緊迫感があって、
耳馴染みのよい七五調でありながら、現代的。
昨年のコクーン歌舞伎「三人吉三」でも
「月も朧に白魚の・・・」からのくだり、
お坊吉三(松也)とお嬢吉三(七之助)の掛け合いが
今までに見たこともないような疾走感にあふれていて、
それを経験した松也ならではだったのではないかと思いました。
また、
拾った五十両で武士に戻れると意気揚々と帰宅し、
「いいこと」を早くおかるに言ってしまいたい浮き浮きした表情と、
「ではあれは…」と気づいてからの悲嘆の落差が
くっきりとしていながらわざとらしさがなく、勘平の人となりに一貫性がありました。

児太郎
は古風さが忠臣蔵にうまくはまり、
古風さの中にも恋の景色が初々しいこと!
声もよく、間もよく、素敵なおかるでした!

「五十両~」と一言いって撃たれてしまう斧定九郎の巳之助も、
切れ味のよい演技と姿で存在感。
お顔もお父さん(坂東三津五郎)に似てきました~。

さらに!
不破数右衛門という、
普通なら大星由良之助(=大石内蔵助)級の重鎮が演ずる役を、
歌昇が声を低く絞って巧みに演じ、びっくり!
隣りの隼人と年齢差はあまりないのに、
弥五郎と数右衛門の格の差をちゃんと保っていました。

芝喜松、歌女之丞が脇をびしっと固めてくれたおかげもあって、
いい舞台となりました。

歌舞伎の未来は明るい!と思えた浅草新春歌舞伎でありました。
1/26まで。ぜひご覧ください!