仲野マリの歌舞伎ビギナーズガイド

一度は観てみたい、でも敷居が高くてちょっと尻込み。 そんなあなたに歌舞伎の魅力をわかりやすくお伝えします。 古いからいい、ではなく現代に通じるものがあるからこそ 歌舞伎は400年を生き続けている。 今の私たち、とくに女性の視点を大切にお話をしていきます。

講座「女性の視点で読み直す歌舞伎」を
東京・東銀座のGINZA楽・学倶楽部で開いています。
歌舞伎座の隣りのビル。
窓から歌舞伎座のワクワクを感じながらのひとときをどうぞ!
これまでの講座内容については、http://www.gamzatti.com/archives/kabukilecture.html
GINZA楽・学倶楽部についてはhttp://ginza-rakugaku.com/をご覧ください。

2015年1月の歌舞伎は、本当に盛りだくさん!
長いので、興味のあるところから読んでくださいね。
劇場名を青く太字にしてあります。

まずは
中村翫雀改メ四代目中村鴈治郎襲名の話題から。

襲名公演というものは、心浮き立たせてくれます。
特に「口上」は一度は観ておきたいもの。
襲名の重責・厳かさとともに、襲名を支える歌舞伎俳優たちの温かさにふれると、
一観客である自分も歌舞伎の歴史に参加しているような気分になります。
もし機会を作れるようでしたら、
ぜひ大阪の松竹座におでかけください。
1月と2月、2カ月連続で襲名公演をやります。

1月の演目としては昼の「廓文章」、夜の「封印切」が、
鴈治郎としての、成駒家(なりこまや、成駒屋改メ)のいわゆるお家芸です。
父・坂田藤十郎、弟・中村扇雀、子・中村壱太郎はもちろんのこと、
上方歌舞伎を盛り上げようと、片岡仁左衛門、片岡秀太郎、坂東竹三郎ら
関西出身の俳優が一丸となって出演。
(出演予定だった片岡我當が病気降板なのは、大変残念なところ)。
人気爆発でTV露出も多い片岡愛之助も、
義父・秀太郎と久々に同じ座組みで顔を出します。

大阪は襲名公演で盛り上がりますが、
東京も、興行数の多さで負けず劣らず熱い!
歌舞伎座のほか、国立劇場と新橋演舞場、
そして浅草公会堂でも公演があります。

歌舞伎座では
昼は市川染五郎、中村七之助、中村勘九郎らによる「金閣寺」
夜は歌舞伎座初登場となる市川猿之助の「黒塚」
私は注目しています。
人気の玉三郎出演は、昼が「蜘蛛の拍子舞」、夜が「女暫」。
「蜘蛛の拍子舞」はシネマ歌舞伎にもなっていますが、
今回は玉三郎以外のキャストが一新しています。
前半の静謐、後半のスペクタクルを、ぜひ生でもご覧になってください。
(シネマ歌舞伎になった舞台のレビューはこちら
「女暫」は、「暫」の女性バージョンで、お正月らしい華やかさがあって楽しめます。
昼の「一本刀土俵入り」は、長谷川伸の名作。泣けます。
夜の「番町皿屋敷」は、あの「一ま~い、二ま~い…」のお菊さんの話。
青山播磨の狂気を、吉右衛門がどのように演ずるか、見逃せません。

浅草公会堂
チョー若手に世代交代した新春浅草歌舞伎。
この若手軍団があなどれない!
尾上松也が「仮名手本忠臣蔵」の六段目、勘平を、
中村歌昇が「一條大蔵卿」のタイトルロールを演じます。
歌昇の「一條大蔵卿」は、吉右衛門仕込みで素晴らしいですよ。
常盤御前の中村米吉も、難役を見事にこなしています。必見。
(研修会の時のレビューはこちら
坂東巳之助の舞は一流なので、「独楽売」「俄獅子」も楽しみです。
中村児太郎も、最近メキメキ力をつけてきました。
長身・イケメン中村隼人の颯爽とした姿、
ほんとに男?と思うほど美しい中村梅丸にも注目です。
兄の歌昇の陰に隠れがちな中村種之助、「猩々」に期待。

国立劇場は、
菊五郎劇団による「南総里見八犬伝」
尾上菊五郎、菊之助親子に中村時蔵、梅枝親子、
そこへ尾上松緑、坂東亀寿・亀三郎兄弟、
さらに市川左團次、市川萬蔵のベテランと役者が揃って安定感は抜群!
お話もキャラクターが立っているのでお勧めです。

新橋演舞場
では
市川海老蔵と中村獅童による「石川五右衛門」
2009年初演の新作歌舞伎で、
漫画『金田一少年の事件簿』『神の雫』やドラマの原作者・樹林伸が
原案作りに参加しています。
宙乗りなどもあるということで、
市川右近をはじめとする澤瀉屋21世紀歌舞伎組の面々がしっかりと脇を支えます。

これだけ公演があると、どれに行くか迷うし、
すべて行くとしたらスケジュールを調整するのが大変。
ついでに、おカネも大変です(笑)。
席と観劇については、また別の日に。

今月の観劇が、皆さまにとって素晴らしいスタートとなりますように。

*公演詳細は「歌舞伎美人(かぶきびと)」が詳しいです。

明けましておめでとうございます。
本年が皆様にとってよい年でありますよう、
そして歌舞伎にとっても素晴らしい年になりますよう
心からお祈り申し上げます。

私の講座は1月9日(金)13:30からです。
1月17日からのシネマ歌舞伎「日本振袖始」について語ります。
ヤマタノオロチとスサノオの対決を、
近松門左衛門がどのように「女の物語」にしたのか、
神話と江戸とのリミックスにぜひご期待ください。

詳細はGINZA楽・学倶楽部まで。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。



京都南座は、
チケットが非常にお高いので、
東京の歌舞伎座よりさらにハードルが高く感じられますが、
11月末から12月にかけての「顔見世」の興業は、
一度は雰囲気を味わいたいものです。

そんな南座で上演している舞台が、
なんとテレビで見られるチャンスが!

12/28日(日)の夜21時30分~23時30分
NHKのEテレ(昔の3チャンネル、教育テレビ)の「古典芸能への招待」で、
京都の南座で上演している舞台を放送します。

1つは、
『恋飛脚大和往来』から「新口村」。
梅川・忠兵衛の雪の逃避行で、今月は片岡秀太郎の梅川が絶品との評判。

来年の私の講座でも取り上げる演目という意味でも
ぜひ観ていただきたい作品です。
 
もう一つが
『仮名手本忠臣蔵』「七段目 祇園一力茶屋」

「大石内蔵助が遊郭で酔ったふりして仇討の気がないところを見せ、
 内蔵助を頼みとする味方までもあざむく」という
映画などでもよくとりあげられるシーンです。

「仮名手本忠臣蔵」では
「大石内蔵助」ではなく「大星由良之助」という役名。
これを当代きっての内蔵助役者である片岡仁左衛門が演じます。
おかるは中村七之助。
今もっとも色気のある若手女方。ぜひごらんあれ。
七之助の兄・中村勘九郎が、おかるの兄・寺岡平右衛門役で出演します。
平右衛門もとても重要な役です。

私は今年は南座観劇ができなかったので、
この放送をとても楽しみにしています。
みなさんも、この機会に、
ぜひ歌舞伎に触れてみてください。
録画して、お正月にごらんになるのもいいですね。

南座の上演情報については、こちらをどうぞ。

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